3 不妊症の原因と転帰 ~原因疾患、卵管因子、子宮因子~

排卵因子
(25~30%)
・ダイエット、ストレス
・高プロラクチン血症
・多嚢胞性卵巣症候群、早発卵巣不全
卵管因子
(30~35%)
・卵管閉塞、狭窄(クラミジア卵管炎など)
・卵管周囲癒着(骨盤腹膜炎、子宮内膜症など)
子宮因子
(10~15%)
・子宮奇形、子宮発育不全
・子宮筋腫
・子宮内膜ポリープ、子宮内膜炎
・アッシャーマン症候群(子宮腔癒着症)
男性因子
(30~35%)
・造精機能障害(特発性、精索静脈瘤、染色体異常など)
・副性器障害(副睾丸炎、前立腺炎など)
・精路通過障害(輸精管閉塞など)
・性機能障害(ED〔erectife dysfunction〕、逆行性射精など)
その他・頸管因子(頸管炎、頸管粘液産生不全など)
・腟因子(処女膜閉鎖、腟閉鎖、腟欠損など)
・免疫因子(抗精子抗体など)
・子宮内膜症
表1不妊の原因

不妊の原因疾患

妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会い、受精して着床するための多くの条件が揃う必要があります。そのため、不妊の原因も
表1に示したように多岐にわたっています。頻度としては、排卵因子が25〜30%、卵管因子が30〜35%、男性因子が30〜35%に見られ、これらの3つの因子が3大原因といえます。複数の原因が重なっているカップルも多く、また、原因が明らかではない場合も20〜25%程度存在します。

排卵因子

排卵因子は、卵胞の成熟、排卵、黄体形成などがうまくいかないものをいいます。ホルモンバランスが悪いと月経異常を来しますが、これらはストレス、短期間の急激な体重変化、肥満、やせ、などで起きますし、また多嚢胞性卵巣症候群という異常によるものも多く見られます。さらに、脳の下垂体から分泌されるプロラクチンが多い場合も無月経となります。

卵管因子

卵管は精子と卵子が出会う通り道なので、左右ともつまっていると自然に妊娠することはありませんし、卵管のまわりに癒着がある場合も妊娠の妨げとなります。卵管の異常は不妊の原因の中で約35%を占め、最も多いもののひとつです。その原因として、骨盤内感染症、子宮内膜症などがあります。骨盤内感染症は性感染症のひとつであるクラミジアが原因となっていることが特に多く、近年増加傾向にあります。子宮内膜症は子宮に似た組織が子宮の外に存在する疾患で、月経痛や骨盤内の癒着をおこします。

図3 子宮筋腫

子宮因子

受精卵は卵管を通って子宮内膜に到達し、子宮の内膜に着床します。子宮筋腫により子宮内腔が変形したり子宮の血流が奪われると、受精卵の着床が妨げられ不妊になる場合があります(図3)。また、子宮の奇形も不妊や不育の原因となる場合があります。

不妊原因別の治療法と妊娠率

不妊症の各種原因と対応する治療法、および症例別妊娠率を一覧表にまとめました(表2)。

不妊の原因主な治療法症例別の妊娠率
排卵因子・排卵誘発60.0%
卵管因子・通水療法
・卵管形成術
・腹腔鏡
・体外受精・胚移植
24.5%
子宮因子・子宮形成術
・子宮筋腫核出術
64.0%
男性因子・人工授精
・体外受精・胚移植
・顕微授精
28.6%
原因不明不妊・卵巣刺激
・腹腔鏡
・人工授精
・体外受精・胚移植
28.8%
表1不妊症の主な治療法と妊娠率

* 体外受精、顕微授精を除く
(徳島大学)

図4 2021年の年齢別ART妊娠率、生産率、流産率

(日産婦倫理委員会)

図5 2021年の年齢別ART治療周期数

(日産婦倫理委員会)

図6 わが国の年次別ART妊娠率・生産率・多胎率の推移

(日産婦倫理委員会)

図7 わが国の年次別ART治療周期数と出生児数の推移

(日産婦倫理委員会)

ART:生殖補助医療、ET:胚移植、FET:凍結胚移植、ICSI:卵細胞質内精子注入法、IVF:体外受精