1 女性の年齢と妊娠・不妊について
女性の年齢と妊娠
卵巣における卵子数は女性の年齢とともに減少します。
図1に示したように、胎児の時期に約700万個あった卵子は、出生時にはすでに200万個に減少し、性成熟期を迎える20歳になると10万個にまで減少しています。40歳を超えると数千個になり、閉経時にはゼロに近づきます。このように、女性の年齢に応じて妊娠できる卵子数は減少します。さらに、女性の年齢が上昇すると染色体異常の卵子が増加し、①卵子があっても妊娠しにくくなる、②流産が増加する、③染色体異常の受精卵が増加する-ことが知られています。一方、母体でも、④妊娠中の合併症(特に、前置胎盤や妊娠高血圧症候群)が増加し、⑤分娩時に難産になりやすくなります。
さらに、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科的な合併症が増加するので、⑥妊娠しにくくなったり、⑦難治性の不妊症が増加するなどの問題もあります。このように、女性の高年齢化は妊娠・分娩には不利であり、図2に示したように、女性の妊娠率は35歳を超えると明らかに低下して行きます。
1)Baker TG:Gametogenesis, Acta Endocrinol Suppl(Copenh)166:18-41, 1972, より一部改変したものを基に作図。
不妊とは
日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会(2015)では不妊の定義を次のように決めています。
生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成功を見ない場合を不妊という。その一定期間については1年というのが一般的である。なお、妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない。
性成熟期のカップルが避妊をせずに夫婦生活を続けると、1年後には80%程度のカップルで妊娠が成立するといわれています。そこで、1年程度夫婦生活を続けても妊娠しない場合を不妊と定義し、妊娠の希望があれば、不妊の検査や治療を開始するのが適当であるとするのが現在の考え方です。もちろん、カップルが高齢であったり、不妊の原因となる異常がある場合(医学的介入が必要)は、1年以内でも開始することを考える必要があります。
2)Schwartz D, Mayaux MJ.: N Engl J Med. 1982; 306(7): 404-406.