2章 不妊症の原因について
1不妊症の原因にはどのようなものがありますか
日本産科婦人科学会では、「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間避妊することなく通常の性交を行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合」を不妊、「妊娠を希望し医学的治療を必要とする場合」を不妊症と定義しています。女性の社会進出にともなって晩婚化が進んでいる現在、不妊期間が1年である場合は不妊症の検査が必要と考えられています。
不妊症の原因には「排卵因子」、「卵管因子」、「子宮因子(頸管因子を含む)」、「男性因子」、「原因不明因子」などがあります。
排卵因子
脳の視床下部、下垂体そして卵巣に関わるホルモン分泌の機能異常が原因で起こる排卵障害です。不妊因子の約10%を占めており、「視床下部あるいは下垂体性排卵障害」、「早発卵巣不全」、「高プロラクチン血症」、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」、といった疾患があります。
卵管因子
卵管内の炎症による癒着、卵管内腔の線毛細胞の機能障害、卵管末端部(卵管采)の機能不全といった卵管の疾患が原因となるものです。近年増加しているクラミジア感染といった性感染症(STD)、子宮内膜症などが影響しているといわれています。
子宮因子(頸管因子を含む)
子宮の異常が原因となって起こる不妊を総称して子宮性不妊と言い、子宮・頸管によるものが不妊因子の約10%を占めます。子宮因子としては「子宮の形態異常」、「子宮筋腫や子宮内膜ポリープ」、「子宮内膜の器質的・機能的異常」、頸管因子には頸管粘液の分泌不全などがあります。
男性因子
不妊症の中で近年注目されている因子です。不妊因子の約35%を占め、その原因は「造精機能障害」、「精路通過障害」、「射精障害」の3つに分類されます。造精機能障害については先天的なもの(クラインフェルター症候群など)がわずかに見られ、後天的なものとしては精索静脈瘤が最も多くなっています。
原因不明
検査の結果、不妊の原因が明らかではない、もしくは判断が不可能な場合は、機能性不妊症または原因不明不妊と診断されます。
2不妊症と年齢にはどのような関係があるのでしょうか
ヒトの卵子の数は、出生前の胎生期20週(妊娠6ヶ月)頃に約700万個となり、最も多い状態となります。出生時には約200万個、初潮を迎える頃に30万個と減少していき、30代後半では約25,000個、そして閉経した時点でほぼ消失します。
妊娠率については年齢とともに低下することが報告されていますが、その原因は年齢の上昇に伴う「卵子数の減少」ばかりでなく、「質の低下」も考えられています。
さらに、加齢によって「異常染色体を持つ卵子が増加」するため、流産率も上昇します。
不妊症の頻度
15〜44歳の女性を対象に調査を行ったところ、全体として13.3%、婚姻関係にある夫婦に限定すると17%が不妊と報告されています。女性の加齢と不妊は密接に関係しており、不妊の割合を見てみると20代前半までは5%以下ですが、20代後半は9%前後、30代前半で15%、30代後半が30%、40代以降になると約64%が自然妊娠の望みがなくなると推定されています。
不妊の原因を性別に見てみると、男女共に原因ありが24%、女性のみ原因ありは41%、男性のみ原因ありが24%、原因不明が11%でした。約半数は男性側に原因があるといわれています。