6章 一般不妊治療について

Q10人工授精とはどのような治療法でしょうか

人工的に調整した精子を排卵日に合わせて子宮内に注入し、受精させる治療法です。

人工授精は男性から採取した精液を人工的に調整し(洗浄・濃縮)、受精しやすい状態にして細い管(カテーテル)などを用いて子宮内に注入する方法です。不妊の原因が乏精子症・精子無力症、性交障害や勃起不全など男性側にある場合や、頸管因子(子宮頸管の分泌液が少ないなど)、抗精子抗体がある場合、原因不明不妊症の場合などに行われます。

人工授精の流れ

採精

病院に持参いただいた精液か、施設によっては専用の個室(採精室)で、マスターベーションにより精液を採取します。

精液調整

下記のいずれかの方法で精液を洗浄・濃縮し、良好な精子を回収します。

① 密度勾配遠心法
専用容器に培養液と精液を入れて、遠心分離機にかけることで、良好な精子と不良な精子を分離し、成熟した精子のみを回収します。また、精液に含まれる異物も分離することができます。

② スイムアップ法
専用の容器に培養液を入れ、採取した精液を少しずつ注入します。運動が活発な精子は精液から培養液に移動する(スイムアップ)ため、その精子を回収します。

子宮内に注入

検査で予め予測した排卵日に、調整して回収した良好な精子を子宮内に注入します。排卵日は、経腟超音波検査で調べる卵胞の大きさや、尿中の黄体化ホルモン(LH)値から予測します。また、hCGやGnRHアゴニストなどの排卵を起こさせる薬剤を併用する場合もあります。

妊娠が成立しない場合

人工授精は最大で6回程度とされています。それは、人工授精で新たに妊娠する可能性が6回目くらいを上限として低くなっていくからですが、人工授精を複数回繰り返しても妊娠が成立しない場合は、生殖補助医療(体外受精・顕微授精)へステップアップします。

排卵誘発剤の併用

卵胞の発育が不十分な場合は排卵誘発剤を併用します。原因不明の不妊はレトロゾール、クロミフェンクエン酸塩、ゴナドトロピンなどの排卵誘発剤を併用した方が、妊娠率が高いというデータがあります。しかし、これらの排卵誘発製剤は多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクもあるため注意が必要です。

【参照生殖医療ガイドラインCQ】

CQ12: 体外受精法の卵巣刺激における注意点は?(卵巣刺激法LH サージ抑制法・検査) レトロゾール(LTZ)は多嚢胞性卵巣
症候群(PCOS)の卵巣刺激に有効か? LTZ は原因不明不妊の卵巣刺激に有効か? LTZ 併用ゴナドトロピン療法はク
ロミフェンクエン酸塩(CC)併用ゴナドトロピン療法と比較して、卵巣刺激として有効か?